SDカードを分解したことありますか?そこにはサンディスクやサムスンが強い理由が隠れています。

SDカードの構造

NANDフラッシュメモリーとコントローラーICという2つがキーパーツです。
SDカードのなかには、フラッシュメモリーとコントローラIC、それとコンデンサーやヒューズが実装されたプリント基板が入っています。
部品の実装方法は3つのタイプがあります。

  1. メモリーとコントローラーICをそれぞれ基板実装
  2. コントローラーICをベアチップ実装
  3. すべての部品と基板を一体化

パナソニックのSDカードの分解動画です。
合計4つもICを使った贅沢仕様です。(フラッシュメモリーが2個、コントローラーが2個)

参考:SDカードの構造と動作について

マイクロSDカードの構造

マイクロSDカードも基本的な構造はSDカードと同じです。
マイクロSDは極薄のICチップを縦に積み重ねることで、小型薄型化を実現しています。
参考:2011年9月 東芝レビュー

マイクロSDカードの修理動画です。カード裏面(端子側)を研磨すると基板の配線パターンがむき出しになります。

廉価なSDカードはなかにマイクロSDカードが入っている場合もあります。
マイクロSDカードはスマホ向けに大量生産されているので、小〜中容量ならSDカードより安いからです。

参考:
SDカードの正常進化?? : shindoのブログ
SDカードを開けたら子供が出てきた。

NANDメモリー

SDカードの最重要部品がNANDフラッシュメモリーです。
フラッシュメモリーの性能がSDカードの性能に直結します。
コストも「(SDカードの)材料費の90%以上がフラッシュメモリー(2007年当時)」だと言われています。
参考:パナソニック関係者インタビューによる論文

多値化

NANDフラッシュメモリーの寿命や速度に関係するキーワードが「多値化」です。
多値化とは1つのメモリーセルに書き込むデータ量を増やす技術です。
書き込めるBit数によって以下の名称で区別されています。

  • SLC(Single Level Cell):1bit
  • MLC(Multi Level Cell):2bit
  • TLC(Triple Level Cell):3bit
  • QLC(Quad Level Cell):4bit
  • PLC(Penta Level Cell):5bit

多値化する目的はコストダウンです。
書換寿命や速度ならSLCがいちばん有利です。
しかし寿命劣化や速度低下を抑える技術が盛り込まれているため、TLCでもQLCでも、普通の使い方ではまったく問題になりません。
産業用や車載、航空宇宙、ミリタリーなど高い信頼性が求められる特殊用途では今でもSLCが使われています。

高耐久

監視カメラやドライブレコーダー向けに高耐久をアピールしたSDカードがありますが、その違いは多値化(SLC/MLC/TLC)です。
書換寿命が長いことがメリットですが、かなり割高です。
いずれにせよSDカードは寿命がある消耗品なので、上位ブランドのSDカードを定期的に交換する使い方のほうが経済的です。
SDカードは最上位ブランドの並行輸入品を選ぶべき3つの理由

参考:
ドラレコでの過酷な使用環境に向いたサンディスクの「高耐久microSDカード」について聞いてみた
【耐久テスト】SDカードの寿命を実際に壊して試す→結果は企画倒れ

NANDメモリーのメーカー

SDカードのキーパーツであるNANDメモリーは、サムスン、東芝、ウエスタンデジタル、SKハイニックス、マイクロン、インテルの6社による寡占的な市場です。

サムスン、東芝&WD

市場シェア約3割を占める最大手が韓国のSamsung(サムスン)です。

そしてSamsungに対抗する企業グループが東芝(現:キオクシア)とWestern Digital(ウエスタンデジタル)です。
東芝とWestern DigitalはNAND事業で提携しており、2社合わせた市場シェアは3割強です。
フラッシュメモリーでおなじみのSandiskはWestern Digitalの子会社です。

SK、マイクロン、インテル

そのほか、韓国のSK Hynix(SKハイニックス)、アメリカのMicron(マイクロン)、Intel(インテル)もNANDメモリーを製造しており、それぞれ市場シェアは約1割です。
MicronとIntelも提携していましたが、2018年に提携解消が発表されました。

YMTC

半導体メモリーは汎用品で価格競争が厳しく、技術開発のスピードも早いため、巨額の投資が必要で、参入障壁が高いビジネスです。
そこに新規参入を狙っているのが中国の清華紫光集団です。
清華紫光集団傘下の長江存儲科技(Yangtze Memory Technologies:YMTC)がNANDメモリーを量産開始しており、技術開発も猛スピードで進んでいます。

参考:
DRAMとNANDフラッシュのベンダー別シェア
IntelとMicronが歩んだNANDフラッシュ連合の始まりと終わり
清華紫光集団がねらうNAND逆転の秘策
中国初の3D NANDフラッシュ企業

SDカードのメーカー

NANDメモリーが大手6社で寡占されているのに比べ、SDカードは色々な企業が参入しています。
主要なSDカードのメーカーの特徴を紹介します。

フラッシュメモリー内製

NANDフラッシュメモリーから内製する垂直統合型のビジネスモデルです。
サンディスク、東芝、サムスンの3社だけです。

サンディスク

グローバルシェア1位。圧倒的なブランド力を誇るのがサンディスクです。
フラッシュメモリーの老舗で、NANDメモリーの性能を引き出す制御技術にも定評があります。
東芝と共同出資している三重県四日市市でNANDメモリーを製造し、中国上海でSDカードやSSDといった完成品を組み立てしています。

サムスン

NANDメモリー世界シェア1位のサムスンはマイクロSDカードに特化しています。
SDカードはサンディスクや東芝、パナソニックが強いですが、マイクロSDカードならGalaxyブランドのスマホがあり、市場規模も大きいので、サムスンの強みが活かせる領域です。

東芝(キオクシア)

東芝はNANDメモリーを発明し、SDカード規格の立ち上げにも関わった由緒正しきメーカーです。
FlashAirのようなユニークな製品もありましたが、サンディスクやサムスンに比べると、SSDやSDカードなどNAND応用製品で存在感が弱い印象は否めません。
東芝から分社化してキオクシア株式会社となり、NANDメモリーに命をかけるラストサムライです。

参考:
世界シェアNo.1のサンディスクに今後のフラッシュメモリ製品や販売戦略についてインタビューしてみました
米SanDisk、上海新工場で携帯向けフラッシュメモリチップの量産を開始
How To Choose SD
サンディスク、5,000件目の特許を取得、4年連続で「トムソン・ロイターTop 100グローバル・イノベーター」に選出

コントローラーで差別化

NANDメモリーの性能を引き出すコントローラーICを自社開発し、性能や信頼性で差別化しているメーカーです。

パナソニック

パナソニックはSDカード規格を主導したフィクサーです。
NANDメモリーの技術を持つ東芝、フラッシュメモリーの技術を持つサンディスクを味方にして、SDカード規格のデファクトスタンダード化を実現しました。

パナソニックのSDカードは耐久性や安全性が売りです。
書き換え寿命が長いMLCタイプのNANDメモリーを採用したり、ヒューズ内蔵といった特徴があります。
参考:おすすめポイントをご紹介! | SDメモリーカード | Panasonic

内部をステンレス板で補強したこともありました。
参考:2009年 パナソニック技報 Vol.55

ソニー

独自規格のメモリースティックを開発していましたが、SDカードとの規格競争に敗れ、現在ではソニーブランドで高性能SDカードを販売しています。
プロフェッショナル領域のカメラユーザーを狙った高速性能と堅牢な設計が特徴です。

参考:
世界最速SDカードをソニーが発売、書き込み299MB/sのSF-Gシリーズ
世界最速級UHS-II対応SDカード
洗濯しても大丈夫、ソニーからタフ仕様のSDカード。書込防止スイッチ廃止
SF-Gシリーズ タフ仕様 開発者インタビュー
産業用機器向けメモリーメディア製品 | ソニーストレージメディアソリューションズ株式会社

価格勝負

コスパの良さで勝負しているメーカーです。

トランセンド

トランセンド(Transcend)は1988年設立の台湾メーカーです。
安くて品質もよいブランドです。おちゃめなTwitterアカウントも人気です。

参考:
ブランド力の向上がカギ、台湾本社副社長が語るトランセンドのグローバル戦略
トランセンド、SDカードの保証を「無期限」→「5年」に
ぶっちゃけすぎなトランセンド「サンディスクとどっちがいいの?」「サンディスクですね(キッパリ)」

その他

SDカードのハイエンド領域は大手メーカーが独占しているため、中小メーカーはコスパ勝負になりがちです。

  • ADATA:2001年設立の台湾メーカー。メモリー製品の「永久保証」をいち早く打ち出し、シェアを伸ばしました。
  • Kingston(キングストン):1987年設立の米国メーカー。1996年にソフトバンクが買収、1999年に売却。
  • PNY:1985年設立の米国メーカー。社名はParis-New Yorkの略。
  • Lexar(レキサー):元はマイクロン傘下。2017年に中国のLongsysが商標を取得。
  • Prograde Digital:元Lexarのメンバーが立ち上げたブランド。プロカメラマン向け高性能モデルに特化。
  • Sillicon Power(シリコンパワー):2003年設立の台湾メーカー。
  • Team:1997年設立の台湾メーカー。
  • Netac:1999年設立の中国メーカー。
  • JNH:嘉年華のプライベートブランド。
  • ハギワラシスコム:デジカメ向けメモリーカードがヒット。現在はエレコム傘下。

参考:
市場から消えたLexar、いよいよ日本の売場で復活か
ハギワラシスコム、民事再生法の適用を申請
ハギワラソリューションズに学ぶ“信頼”の重要性

賢い買い方

特価品のSDカードは中身にマイクロSDが入っていたりと、安さには理由があります。
SDカードのカタログスペックはあてになりません。
信頼できるブランドで選んだほうが無難です。

それではどのブランドを選ぶべきでしょうか?
性能重視ならソニーも魅力的ですが、コスパも考えるとサンディスクや東芝、サムスンが安心です。

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SDカードは最上位ブランドの並行輸入品を選ぶべき3つの理由