2021年7月8日、世界人工知能大会でK510が正式発表されました。
K510は中国の半導体ベンチャー「Canaan」が開発する第二世代AIチップです。
K510の詳細仕様は開示されていませんが、様々な情報ソースよりK510の情報をまとめました。
目次
K510とK210の性能比較
K510はCanaanの第1世代AIチップ「K210」の性能向上版です。
演算能力は3倍もパワフルになったと謳われています。
K510もK210と同じくRISC-Vアーキテクチャで、オープンソース志向のチップです。
K210 | K510 | |
---|---|---|
CPU | 400MHz 2コア | 800MHz 2コア |
DSP | なし | 800MHz 1コア |
KPU | 0.8TOPS | 3TOPS |
SRAM | 1MByte | 1.5MByte |
K210が2コアなので、K510が5コアになると思いきや、違いました。
しかし2コアのCPUに加えて、DSP、KPU、ISPという3つのコプロセッサがあるので、制御できるプロセッサが5つあるという見方もできます。
K510の特徴
高性能な画像処理プロセッサを搭載
- ToFカメラ対応
- 2D/3Dノイズリダクション
- ワイドダイナミックレンジ機能
- 魚眼レンズ補正
- ハードウェア3A(AE/AWB/AF)
想定用途
- HDビデオ通話
- 空撮ドローンの画像処理
- ロボット
インターコネクト技術を刷新
- 独自開発した10GB/sの高速PHYインタフェース
- NoC(Network-on-Chip)バスアーキテクチャ採用
- 各IPコアが独立したクロックで動作。ドメインごとの電源管理により消費電力性能が向上。
Arterisの「FlexNoC」を採用という報道もありました。
その他
- RISC-VデュアルコアCPUに加えて、AI処理を効率化するDSPを搭載
- DSPとCPUの柔軟な相互通信を可能にするメールボックスモジュールを搭載
- bfloat16 (BF16)の浮動小数点演算に対応
- MIPI CSI2, DVP対応
- 3系統のカメラ入力、3コアのISPを搭載。デプスカメラや3D処理に最適。
- ベアメタル、RTOS、Linux対応
- OpenCV, Python Numpy対応
- TensorFolow, PyTorch,ONNX, TVM対応
参考:
Cannan社発表資料
Twitter
CNX Software
ロードマップ
CanaanのAI向けSoCブランド「Kendryte(勘智)」のロードマップも発表されています。
処理性能に応じて、エントリー向けのK2xx、ミドル向けのK5xx、ハイエンド端末向けのK8xxという3つのシリーズ展開が予定されています。
Kendryteの第一弾が2019年発売したK210です。
第二弾が2021年発売のK510です。
そして第三段は2022年にK210後継のK230が投入される予定です。
その後も、K510後継のK530、ハイエンドのK810など続々と新製品が開発される予定です。
21年6月時点
K510の開発状況
- K510は21年3月にICチップ製造工程(前工程)が完了
- K510のファンクションテスト(動作試験)も完了
- K510は21年下期にリリース予定
- K510シリーズはハイエンドカメラ、エッジ端末、ビデオ会議など様々な用途に展開される見込み
AI事業の状況
- K210は2018年の発売以降、累計47万9千個を出荷
- 開発者コミュニティの発展と教育分野のスポンサー活動も積極支援。中国文科省が主催する2021年学生OS開発開発大会にK210搭載したマイコンボードが採用された。
- アイトラッキングVR、ロボットなどK210を使った開発製品も活発。
21年4月時点
K510の開発状況
- K510は20年Q4にテープアウトし、製造工程が3月完了予定
- K510は過去2年で開発した様々なデジタル/アナログのIPを搭載し、ミッド〜ハイエンドのAIoT市場向けにカスタマイズ可能なシリーズ展開を予定
- K510の量産は21年下期予定
K230の開発状況
- K230はK210のアップグレード版で、演算能力と消費電力を改善
20年11月時点
- K510のテープアウト完了し、21年Q1に発売予定
- K210の採用が順調に拡大中。AIで職場の密度分析する米ベンチャー「VergeSense」、深センのロボットベンチャー「UBTECH」、DJIのSTEMプロジェクト、スマートドアロックなど。
- K210は毎月2〜3万個出荷している。21年は月5万個以上になる見込み。
20年4月時点
Kendryteの第2世代AIチップ「K510」は20年上期に量産予定
当初、K510は2020年前半に量産される予定でした。