デュポンコネクタは、ラズパイやArduinoのGPIO端子などで広く使われている汎用コネクタの通称です。2550コネクタやQIコネクタとも呼ばれています。
電子工作分野では最もポピュラーなコネクタにもかかわらず、規格や正式名称が存在しない謎多き「デュポンコネクタ」を調査しました。
目次
名前の由来
なぜデュポンコネクタと呼ぶのか?
いわゆる「デュポンコネクタ」のベースとなった「Mini-PVコネクタ」をアメリカの化学メーカー「デュポン(DuPont)」が販売していたからです。
デュポンコネクタの正式名称は?
「Mini-PVコネクタ」から派生して普及した野良仕様のため、正式な名称はありません。
最も一般的な通称はデュポンコネクタです。日本では2550コネクタやQIコネクタとも呼ばれています。
たんに「汎用ピンヘッダ/コネクタ」と呼ばれることもあります。
2550コネクタという名前の由来は?
部品のシリーズ名が由来だと思われます。
台湾のコネクタメーカーEXCON TECHNOLOGY社のラインアップから確認できます。
Wire To Board Connector – EXCON TECHNOLOGY COMPANY
電子部品では、たとえば4680=46mmx80mmなど、部品の寸法に由来する呼び方もあります。2550コネクタという呼び方も一見、部品サイズと関係しているようにみえますが、2.54mmピッチ(0.1インチ)、0.64mm(0.025インチ)角ピンのため、寸法とは関係ないように思われます。
EXCON TECHNOLOGYのラインナップをみるかぎり、たまたま2550が割り当てられただけではないでしょうか。
QIコネクタという名前の由来は?
2550と同じく、コネクタメーカーの部品シリーズ名だと思われます。
QIやQIIといった型番のコネクタを共立電子さんで購入できます。
デュポンコネクタとMini-PVコネクタは同じ?
いわゆる「デュポンコネクタ」と、オリジナルの「Mini-PVコネクタ」は別物です。
外観はそっくりですが、接点の構造が異なります。
Mini-PVコネクタは、ベリリウム銅合金の板バネがコンタクトピンを押さえつける構造です。コネクタが抜けづらいうえ、挿抜を繰り返しても安定した接触を得られます。
いわゆる「デュポンコネクタ」は、真ちゅう製のコンタクトピンのみで保持する構造です。廉価な反面、振動等で抜けやすく、挿抜を繰り返すうちにゆるくなりがちです。
デュポンコネクタの歴史
デュポンコネクタの歴史はとても古く、1950年までさかのぼります。
Quentin Berg氏はバーグ・エレクトロニクス(Berg Electronics)を創業し、自身が発明したユニークな構造のコネクタを「Mini-PV」と名付けて売り出します。
俗説によると、ベリリウム銅合金のバネにより500回以上の挿抜を繰り返しても新品同様の安定した接触を得られることから、Perpetual Virgin(永遠の乙女)=PVと名付けたそうです。
Mini-PVコネクタはIBMで採用され、大ヒットします。当時の通称はバーグ・コネクタ(Berg connector)でした。
1966年、バーグ・エレクトロニクスはデュポンに買収されます。
デュポン傘下となったあとも、バーグ・エレクトロニクスのブランド名は継続して使われていました。
1987年頃からバーグ・エレクトロニクスの名前が消え、デュポンの名前に置き換わっていきます。当時の圧着工具の銘板からもブランド名の変化を確認できます。
このタイミングで「バーグ・コネクタ」という通称が「デュポン・コネクタ」に変化したと言われています。
同じく1990年頃から、Mini-PVの廉価なコピー品が出回るようになります。Quentin Berg氏が出願した主要特許が期限切れとなったことも関係していると思われます。
そして1993年、デュポンはコネクタ事業を投資ファンドに売却します。この時点で「デュポン製のコネクタ」は消滅し、「デュポンコネクター」といえばMini-PVコネクタのコピー品という不思議な状況が生まれました。
ちなみに、デュポンの手を離れたMini-PVコネクタは、現在もアンフェノール社(Amphenol)から販売されています。
参考
Why do we call these “DuPont” connectors? – Matt’s Tech Pages
DuPont and “DuPont” connectors, and how to crimp them properly – Matt’s Tech Pages
Berg connector – Wikipedia
Berg氏が出願した特許の一例
Breakthrough contact design spawned $500M+ connector company
DupontコネクタとDigi-Keyからそれらを見つける方法
デュポンコネクタの由来を調べてみると、思っていた以上に複雑な歴史がありました。日本ではQIコネクタという表記も見かけますが、その由来となるコネクタメーカーは見つけられませんでした。
デュポンコネクタについて情報をお持ちの方はコメント欄よりお知らせください。